白の団と黒い王子

コナン・ドイル 作
小池倫太郎・秋元一剛 訳
三輪士郎 挿絵

トビラ画像
上巻表紙画像   下巻表紙画像
上巻をAmazonで購入 下巻をAmazonで購入

◆ あらすじ

百年戦争の時代。
修道院育ちで礼儀正しく世間知らずなアレインは旅に出て、傭兵の仲間となった。
思いがけないことから気が強い美少女・モードと出会い、その危機を救い、
それが縁でお城に住むモードら3人の少女たちの家庭教師を引き受けることに。
しかし彼女の父親ナイジェル卿は有名な剣士。
廃れかけた騎士道のあくなき追求者で決闘狂だった──
恋と騎士道をひた走る、コナン・ドイル渾身のツンデレラブコメ&戦記がラノベ新訳で登場!


◆ キャラクター紹介

アレイン・エドリクスン 修道士あがりの従騎士
アレイン・エドリクスン

聡明で礼儀正しい美青年。世間知らずで善良すぎるため皮肉が通用しない朴念仁。俗界で見聞を広めるための旅に出て、エイルワード と仲間にな り、トゥイナム城でナイジェル卿の従騎士、モードの従者兼家庭教師となる。ミンステッドの領主である古い血筋を受け継いでいる。修道院で育てられたため物 静かで穏やかだが、一度怒りに火がつくと古い戦士の血が沸き立ち、一歩も後に退かない。学識があり、いくつかの言語に通じて文字も読め、工芸や絵画の才能 がある。
ホードル・ジョン 怪力無双の巨漢
ホードル・ジョン

ビッグ・ジョンとも呼ばれる、見上げるような大男。女に騙されてフラれたことからビューリー修道院に入ったが、修道院暮らしが まったく性に合 わず追い出されてしまう。エイルワードとの偶然の出会いから、白の団に入ることに。人並み外れた怪力で、戦士として数々の偉業を成し、手柄を立てていく。 悪童だが男気にあふれ、学はないが知恵はある。歌が得意で、その大きな身体から朗々と響かせる。修道院時代からアレインの根性を鋭く見抜き、一目置いてい る。
サムキン・エイルワード 的を外さない女弓使い
サムキン・エイルワード

白の団の傭兵。達人級の弓の腕前を持つ女悪党。恐らく十代中ごろからこの稼業に身を投じ、フランス中を荒らしまわっている。レス リングをさせ てもジョンといい勝負をするからかなり強い。口は悪いが陽気で姐御肌で傭兵たちの中でも人望がある。アレインやジョンを白の団に引き入れ、二人を弟のよう にかわいがる。おしゃべりで、楽しい話のタネは尽きることを知らない。調子が良いうえにとてつもなく好色な両刀使いで、あちらこちらの女と結婚(!?)の 約束をしている。
ナイジェル・ローリング 小さな大剣士
ナイジェル・ローリング

ソールズベリー伯が所持するトゥイナム城の城代を務める下級騎士。小柄ながらイングランドで指折りのつわものとして知られる剣 豪。礼儀正しく 穏やかで、誠実で立派な人物だが、その一方で既に時代遅れになりつつある騎士道のあくなき追求者で戦闘狂、という少し変り者でもある。なにかというと名誉 ある戦いを求める。名声は高いものの気前が良すぎてサイフごと物乞いに渡してしまうような無頓着さのせいで、経済的にはあまり恵まれていない。愛妻家。
モード・ローリング ツンデレお嬢様
モード・ローリング

ナイジェル卿の一人娘。気が強く、高飛車でお転婆なお嬢様。鷹狩りや乗馬やロマンスに夢中で、空想好き。一方で、宗教改革者に先 んじるような 進歩的な考えを語る聡明さで、アレインを大いに驚かせる。しかしモードのほうもアレインの俗っ気のなさと善良さ、皮肉の通じなさに対しても大いに調子を狂 わされ、お互いに「気になるあいつ」状態。そんな状態に身悶えてきたモードにとって、アレインの突然の全面降伏は意外な事態だった。そしてこれまで苦しん できた反動で……?
オリヴァー・バテスソーン 大食漢の騎士
オリヴァー・バテスソーン

イングランドの騎士。ナイジェル卿の古い友人で、武闘派として知られる。とにかく食欲に忠実で、食事の話ばかりしている。そうか と思えば武勇のことでとてつもなく誇り高い面を見せる豪傑。

ベルトラン・デュ・ゲクラン ブロセリアンドの黒いブルドッグ
ベルトラン・デュ・ゲクラン

フランス王軍総司令官を務めた有名な実在の騎士。「レンヌからディナンまでで一番醜い」と評された恐ろしい顔の男で、武術の達人 で天才戦術 家。槍をまじえるだけで大いなる名誉が得られると言われ、イングランドと敵対しながらも、騎士道を体現する人柄と武勇により、イングランド人からも愛され ている英雄。

ティファーヌ・デュ・ゲクラン 神秘的なレディ
ティファーヌ・デュ・ゲクラン

ゲクランの妻。ティファーヌ・ラグネル。鋭い知性と強い意志を持った淑女。その独特の雰囲気に誰もが呑まれてしまう。ゲクランに よれば、ティ ファーヌは神秘的な一族に生まれ、神から贈られた「聖なる予見のとき」と呼ばれる未来を見通す不思議な力を持っているという。その予言はすべて現実のもの となっている。



◆ コナン・ドイルがこんなにラノベなわけがない?

本書はシャーロック・ホームズの作者コナン・ドイルが自分の書いた小説でもっとも 気に入っていた作品「The White Company」の新訳です。
コナン・ドイルはこの長編小説にかなり力を入れて執筆中、ちょっと中断して片手間にホームズの「四つの署名」を書きあげ、また本作執筆に戻ったそうです。
この小説が日本であまり紹介されなかった理由を推測すると、イングランドの歴史小説で、そもそも歴史に興味がない読者には難解だからということがあげられ ます。
それともう一つは、実は全編にわたってすっとぼけ倒したユーモアコメディであるという点が、これまでは上手く伝わってなかったからではないでしょうか。
その点を解消しようと試みたのが今回の超訳という名の新訳です。
歴史小説にもジャンルわけされているこの物語の背景は、百年戦争まっただ中で、中世の世界を紹介するものとして読めます。
しかしもっとていねいに意図するところを読み込むと、この小説は漫画やラノベ(ラノベとは商品パッケージのことですが、ここではそういうパッケージを好ん で買う読者に好まれるような作品)で定番になっているような、キャラクターの魅力で動いているコメディ、しかもかなりラブコメです。
修道院育ちで穏やかさとサクソンの戦士の凶暴さの二面性を持ち合わせている主人公・アレインは、純粋で誠実で世事に疎く、朴念仁、いかにもラノベの主人公 らしいキャラクターです。
ヒロインとなるお転婆なお嬢様・モードも、浅はかな意地悪さを振り回すかわいらしさと、弱くて強い、という、しなやかな十代の少女らしい魅力にあふれてい ます。
弱く、強い、という人間らしい部分がカリカチュアされているからこそのツンデレキャラです。
この二人が、お互いにない部分にめんくらいながらも影響されあっているさまや、告白のシーンで立場逆転に浮かれてかさにかかるモードの様子、といったラブ コメパートを見ていると、ニヤニヤしてしまいます。
ホードル・ジョンは悪童ですが、なかなか漢らしい奴で、アレインのことが好きなんでしょう。
意外な特技は博奕が強いということ。注意深く読んでみると、あ、また勝ってる、ということがわかります。この剛運は最後まで続きます。
ジョンという名前の人物がたくさん出てくるので混乱しないようにご注意ください。あとトマスとかサイモンとかも。ドン・ディエゴも二人出てきますが別人で す。
エイルワードは、両刀使いの姉貴です。アレインの運命を変える大きなきっかけとして現れる、悪人でも善人でも男でも女でもないニュートラルな存在です。
ナイジェル卿はドイルのお気に入りで、このお殿様を主人公にした別の小説も書いています。
誠実な戦闘狂という、かなりの変人ですが、こういう人をまた違う状況に放り込むと、もっと困ったことになるんじゃないかと思います。
こういうキャラ立ちをさせているあたりが、ホームズという変人キャラを作ったドイルの真骨頂ではないでしょうか。
さて。これまでほとんどの出版社が手をつけず、日本で売らなかったこの小説を改めて紹介するために必要だったのは「キャッチフレーズ」だったのではないか と思います。
原書房版では「白衣の騎士団」という邦題をつけていますが、「騎士団」というのも内容からすると「キャッチフレーズ」的です。
ラノベというキャッチフレーズでこの本は売られていますが、ラノベとは「コミックイラストをパッケージにつかった小説の売り方」という以上に確かな定義は なく、しいて言えば「そうした売り方で手に取る人が好んで読めるもの」、ということでしょう。
古典の新訳を手に取ってもらう方法としてそのような売り文句は使っていますが、内容は翻案部分含めてかつて外国文学を本邦に紹介してきた諸先輩方のやりか たよりもいくらか大人しいくらいだったかと思います。
ですので、未読の方はラノベという言葉に先入観を持たず、ぜひ手に取ってみてください。
今回の新訳出版企画の意図として、日本の中高生や物語の快楽を求めるタイプの読者が読むにあたって、わかりやすい翻訳を心がけました。
また歴史的な言葉や紋章学の言葉なども細かくリサーチしております。
「白の団と黒い王子」が面白かったのでもっと読みたい、あるいは物足りなかった、という読者のみなさんは原書房から出ている完訳「白衣の騎士団」もお勧め します。
ぜひ比べて、何がどう新訳なのかその目で確かめてみてください。
きっと本がもっと好きになることを願っております。





Worksページへ戻る